エピデミックとしてのコロナウィルス感染症への対処法
― 太極拳で健康維持 -
2023 年1 月27 日
宮城県武術太極拳連盟 医科学委員会 飯澤 理
新型コロナウイルス感染症に対する規制が大分少なくなり、経済や社会活動はコロナ以前に戻った感じさえしますし、また感染法上の位置づけも季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する方向で動いています。
一方で、新型コロナウイルス感染症によって亡くなれた方々は、第6波で約1万2千人、第7波で約1万5千人、第8波はまだ終焉していませんが既に1万8千人を超え、2020年からの累計では6万6千人を超え、東日本大震災で亡くなれた方が約2万7千人(関連死含む)であることを考えると多くの方が亡くなれている事が分かります。
このギャップをどう考えるかですが、亡くなれた方の特徴を調べてみると「60歳以上で基礎疾患あり」とか「第8波の猛威、新型コロナ死亡者の9割が70代以上の高齢者」とか「第8波で亡くなっている人の多くは脆弱な高齢者」と表現されているように、ワクチン接種が進んで治療薬が徐々に普及してきていて、若い人にとってはただの「かぜ」に近くなりましたが、高齢者が感染すれば文字通り致命的な状況に陥ってしまうところに問題があります。
ここで亡くなっている高齢者の特徴をみてみると、持病の悪化、あるいは体力や免疫力の低下に伴って死亡するケースが目立っていて、いわゆる老人症候群に陥っている事が分かります。老人症候群の一歩手前がフレイルと呼ばれる「病気ではないけれど、年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態」ですので、65歳以上の高齢者にとってフレイルを予防することは、コロナウイルス感染症にかかっても死なずに済む事につながります。
最初にお話しさせていただきましたように世の中はコロナウイルス感染症に対する規制が少くなっていますが、これはコロナウイルス感染症が無くなったわけではなく、若い世代にとっては「かぜ」に近くなったので、経済や社会活動を維持するためコロナウイルス感染症を容認する方向に舵を切ったと言えるでしょう。この状態はコロナウイルス感染症のエピデミック、つまりウィズ・コロナ、コロナウイルス感染症が常にある世の中に移行していることが分かります。
以前のコロナウイルス感染症に対する規制があった時代は日本全体の感染者数が少なく、結果として感染する危険性も低かったのですが、これからの社会は常に周りに感染者がいて感染する危険性も増えます。ですから、感染を予防するだけでなく、感染したときにそれを乗り越える体を維持する事が必要になります。そして感染を乗り越える体を維持する方法がフレイルを予防することになります。
フレイルの予防には適度な「運動」と「栄養バランス」の取れた食生活、そして「社会活動への参加」が重要です。太極拳を行うことは「運動」になりますし、太極拳の教室に行くことは「社会活動への参加」につながりますので、日々太極拳の練習を行い、定期的に教室へ通って先生や仲間とお喋りをして、万が一コロナウイルス感染症になってもそれを乗り越える体を維持して下さい。