県連医科学委員会より「新型コロナ-変異株とワクチン」について

 

新型コロナウイルス感染症:変異株とワクチン

 

2021 年5 月10 日
宮城県武術太極拳連盟医科学委員会

今回もコロナ(COVID-19)についてお話させて頂きます。

今年の2 月から3 月にかけて宮城県でもコロナが流行し、4 月の半ばからは徐々に感染者数も落ち着いてきていますが、入院を必要とする方は遅れて増えて退院するまで時間がかかりますので、病院の中はまだその影響を受けていて、仙台市でもコロナ感染者を受け入れるため一般診療や救急診療の制限がかかっています。

この医療状況が日本で最も悪化しているのが現在の大阪で、コロナ対応のため一般診療や救急診療を制限し、がんを含め多くの手術が延期になり、救急車の搬送先が無くなり、コロナ感染者も中等症の治療しか出来ない施設に重症患者が運ばれ、入院出来ず在宅での死亡例も増えています。

大阪のこの状況はN501Y という感染力の強い変異株が引き起こしたもので、今までは三密で感染していたコロナがN501Y では二密や一密で感染してしまいます。

この変異株N501Y で国全体に医療崩壊を起こしたのがイギリスで、すべての手術を数カ月先に後回しにするなど通常診療を中断し医療をすべてコロナ対策にあて、何とか耐え忍び、その間にワクチンを接種しそれを乗り越えることが出来ました。

イギリスではワクチンを打つ人が医師や看護師だけでは足りないので、ボランティアを募ってワクチンを打てるように教育し(例えばワクチンの接種の仕方の指導を受けた牧師さんが一般の人にワクチンを接種する)、一斉に国民にワクチンを接種し、その結果、街ではマスク無しで会話ができる程になっています。

また国家としてワクチンが最も普及しているイスラエルでは経済活動まで通常の状態に戻っています。

残念なことに今の所日本ではまだワクチンが普及していません。
日本では過去のワクチンに対するマスコミの報道により行政がワクチンに対して非常に慎重な制度を取るようになり、コロナのワクチンも行政の対応に時間がかかっています。今回のコロナのワクチンもマスコミはアナフィラキシーや副反応を取り上げていますが、実際にはどうなのでしょうか。

まずアナフィラキシーですが、コロナのワクチンのアナフィラキシーの頻度はそれ程多くなく、確かにインフルエンザのワクチンによるアナフィラキシーよりは多いのですが、抗生剤によるアナフィラキシーよりは少ないので、病気で抗生剤を飲むよりはコロナのワクチンの方がアナフィラキシーの心配はありません。

また調べてみましたがコロナのワクチンでアナフィラキシーを起こす可能性がある人はこれまでに他の原因でアナフィラキシーを起こして救急車で運ばれたことがある人のようですので、これまでにアナフィラキシーで救急車に乗った経験がなければアナフィラキシーに関してはそれ程心配ないと思います。

アナフィラキシー以外の副反応ですが、先行接種と言って日本人の副反応を調べるため今年2 月から接種を受けた医療従事者のうち約2 万人を対象とし調査の結果では発熱、接種部位疼痛、倦怠感、頭痛などの症状が主体で、私も先行接種でワクチンを接種しましたが接種部位の痛みと他には風邪にかかった時の症状といった感じでした。

ワクチンの効果ですが、イスラエルや英国等のデータから7~8 割以上感染しなくなり、8~9 割以上発症しなくなり、発症しても重症化し難く、またコロナで死亡することは殆ど無くなることが解っています。

個人ではワクチンを接種すると一種の安心感が出ますし、社会的にも感染が抑制されるのでワクチンが広く普及すればコロナの騒ぎに一息つくことが出来ます。

変異株はN501Y 以外にE484K, E484Q, L452R 等幾つかありその中にはワクチンの効果を低下させるものもいて現在のワクチンだけでコロナが終焉するとは思えませんが、日本でも早くワクチンが普及してこのコロナの騒ぎに一息つきたいものですね。

医科学委員会
飯澤 理

 

新型コロナウイルス感染症:変異株とワクチン(PDF)